渇望-gentle heart-
流星は今、何を求め、誰を抱いているのだろう。


ふと、信号待ちになり、窓の外へと視線を移してみれば、通りを百合と誰かが歩いていた。


横にいた人の顔は見えなかったけど、でも腕を組んでいる姿を見れば、想像に易い。


ジュンじゃない、男。


何故いつも、彼女ばかり好かれるのだろう。


あたしにないものばかりを手にして、なのにそれじゃ満足していないように、何かを欲するような瞳。


憎くて堪らなくて、無意識のうちにあたしは、唇を噛み締めた。



「香織、どうしたの?」


弾かれたように顔を向けてみれば、若菜がこちらを見て首を傾けている。


何でもないの、なんて言って、あたしも作った笑顔を返した。


結局、流されてしまうのは、あたしの弱さ。


相手と同じ顔をして、相手のテンションに合わせ、相手と同じくらいの馬鹿な話をし、馴染んだような気分に浸る。


それがあたしの処世術。



「あーぁ、しっかしつまんないよね。
地球が爆発する的なイベントでも起こらないもんかなぁ?」


「それってイベントの範疇超えてるっての!」


あたしの突っ込みに、若菜はゲラゲラと大口を開けて笑っていた。



「けどさ、最近ナンパ待ちも飽きたし、クラブもつまんないし、やることないよねぇ。」


「それわかるー!」


何が楽しいのかもわからないのに笑って、つまらないと思いながらも相槌を打つ。


本当にくだらないのは、きっとあたしの方だろうけど。


人で溢れた街の中で、こんなあたしに誰が気付いてくれるだろう。

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