青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―

#02. 舎弟の条件




◇ ◇ ◇



舎弟問題が勃発して早三日。


これいって変わったことはない。

キヨタとタコ沢が新たにチームに入って、池田という不良チームに探りを入れて、いつもの如く平々凡々の日常を過ご……せていないんだな、実は。


この三日間で俺達舎兄弟は散々な目に遭ってきた。


ヨウは始終キヨタに纏わり付かれているし、モトも一応候補ってことで結構ヨウの傍にいるし、俺は俺で二人に闘争心を向けられているし(主にキヨタにライバル視されている)。


口ではああ言っているけどキヨタはどーも、モトを推したいみたいで会話の合間あいまにモトの名前を出している。


何だかんだで友達思いみたいだ。

表向きはヨウに纏わり付いているけど、裏では全力でモトを推している感じ。


だけどそれが度を過ぎているのも確かで。


いや、纏わり付きっぷりが凄まじいよ。ヨウのモテ具合が半端ない。

纏わり付かれているヨウは参っているようだった。

ヨウの奴だってモトやキヨタのことを気遣いたいんだと思う。纏わり付かれても強くは拒まない。

「少しは離れろ」とは言うけど、それだけのこと。

俺のことだって気遣いたいんだろうけど、俺までには手が回らないようだ。


なにぶん三対一だもんな。

二人の相手だって大変だろうし。



三日も続けば、さすがのヨウも疲れが出始めてくるわけだ。



多分纏わり付かれているだけじゃなくて、真剣に舎弟問題を考えているからだろうな。

溜息の回数が多くなった気がする。

俺の見る限り、数十分で軽く三十は零していると思う


しかもチーム内では、“これは舎兄のヨウと俺達舎弟の問題だから”という理由を挙げ、余計な口出しはしてこない。


ワタルさんに至ってはからかう始末。

ワタルさんは別として、他の皆は気遣ってくれているのだろう。

この問題は第三者が口を出せば出すほど話が拗れるものだから。


ヨウもそれを理解しているから、自分で何とかしようとするわけで。


――ヨウの奴、一人で考えることが多くなった。学校でも結構見るよ、ヨウの考えている姿。


なーんか間違っているよな。

だってこれはヨウ一人の問題じゃない。なのにヨウだけ一人うんぬん考えて……なあ?

元凶はヨウにあっても、これはヨウ一人の問題じゃない。

俺が舎弟らしくないってのも元凶のひとつだ。


そりゃ確かに最初は無理やり舎弟になっちまったけどさ。

今だって本当は嫌で嫌で泣きたいけど、泣きたいけれど、ヨウの舎弟だと自分で認めている。なら俺も悩むべきだ。


だからこそ俺達はどうしても舎兄弟二人っきりで話さないといけない。 


ただ学校じゃワタルさんやハジメ、弥生がいるし、放課後は他の舎弟候補がいる。おかげで話す機会が設けられない。


それでも話す時間は作りたい。

向こうも俺と話したがっているようだから。


なんっつーの? 目は物を言うっつーの? かち合う視線で向こうも俺と話したいと主張してくるんだ。


大抵そういう時はヨウから動くんだけど、今回に限ってはヨウからは動かないと思う。正しくは動けない。
他の舎弟候補のこともあるし、俺にも気遣っているようだからな。


なら今回に限って俺から動いてみようと思う。


ある日の朝、起床した俺はベッドから下りる前に携帯を引っ掴んでヨウにメールを送る。


内容は『ちょっと付き合ってくれね?』俗に言う、おサボリしませんかメールだ。

あいつの返信はむっちゃ早い。

数分も経たない内に『いいぜ。病院にでも行くのか?』とメールが返ってきた。


しかし俺が真面目くんなだけあって、おサボリの意図を察してもらえず……遺憾である。普通に病院に付き合って欲しいのか? と言われちまったよ。


だからノリよく、アンダーラインを此処に引いて欲しいんだけど、不良相手に超ノリよくメールを返した。


『兄貴と二人でおデートしたいのよ。付き合ってくれるでしょう?』


自分でもキモイの分かっているよ! 色々オワタ感が出てるのも分かっている! マジで終わっているよなぁ!


でもあいつ、こういうノリ大好きなんだよ。面白いこと大好きなんだよ。ヨウへの誘いにはノリが一番なんだよ。


その証拠に数十秒も経たない内に『まあ珍しいお誘い! いいわよ』とメールが返ってきた。間違ったってイケメンが返すようなメールじゃない。

こんなん見たらヨウに取り巻きの女の子泣くって。女子の悪ノリ会話か、これ! 


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