青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―




「アンタはオレ達を信用していない。だから簡単に自己犠牲ができるんだ。
本当にオレ達を信用しているなら、オレ達を頼ってくれる筈だろ?! 今だってそうだ。

どうしてオレを誘ってくれないんだよ。
アンタをサポートするくらいの力はあるぞ。

左肩が痛む、だから手伝ってくれ。その一言でオレはどこまでもアンタに手を貸すのに。


それともオレが不良だから頼れないか?

アンタはいつもそうだ。
オレ達に馴染んでいるようで、どこかで一線を引いている。自分なんかいなくてもチームは大丈夫だろうと高を括っているんだよ。


まるでいつでも消えられるよう、斬り捨てられるよう、構えているように思えてならない。


ヨウさんはアンタのそういう面をすこぶる気にしているんだ。

例えばアンタがヤマトさんにヤラれたあの時、どうして助けてくれのヒトコトを向けてくれてなかったんだ。

電話までしておいて『ヤマトにヤラれそうになっている』そのヒトコトすら言わなかったアンタのことを、ヨウさんは凄く気にしていたんだぞ。


いつもは平然と群れるくせに、いざという時には頼らない。頼ろうとしてこない。いい迷惑だ!

オレ達はアンタのそういう一面のせいで余計な心配までしなきゃいけないだろ!
心配って分かるか? オレ達はアンタを心配しちまうんだよ、仲間だって思ってっから!



……オレ、本音をいえば、今までアンタのことを仲間だと認めていなかった。


それは嫉妬心からだ。

努力もせず、ヨウさんに気に入られているアンタの存在が気に食わなくて仕方がなかったんだ。


ヨウさんの舎弟になりたいだなんて大それたことは思ってなかったけど、糸も容易く舎弟になったアンタがヨウさんに特別扱いされているような気がした。


しかもアンタは舎弟の価値をさほど重視していない。

それが妙に気に食わなかった。


そしてヨウさんを心のどっかで疑っていた。

なんでこんな奴を舎弟にしたんだ。


仲間に入れたんだ。

こんな奴にオレは負けたのかよ。


いつも悔しさを噛み締めていた。親友のキヨタに愚痴ったこともあった。

だからキヨタの奴、オレの気持ちを酌んで、捨て身で舎弟問題を起こしたんだ。


正直、どこかで思っていた。

キヨタならヨウさんの舎弟でもいいかなって。キヨタなら充分に実力もあるし、あいつに負けたなら納得もする。


一度そう思うと、アンタにだけは舎弟になって欲しくないと心の奥底で強く思った。

オレが味わっていた敗北をアンタにも味わって欲しいと思っていたのかもしれない。


だけど、ヨウさんが中間発表をしたあの時。舎兄弟を解消した瞬間、オレは素直に喜べずにいた。


ただただ疑問が残ったんだ。

本当にこれで良かったのか。
もしかしたらオレはとんでもない過ちを犯したんじゃ。

二人が舎兄弟じゃなくなったら、アンタはとっととチームから抜けるかもしれない。


だってアンタはヨウさんの舎弟だからオレ達と一緒にいるわけだし、チームに尽くしているのも舎弟という肩書きがあるからで。

舎弟じゃなくなったらケイはオレ達の前から消えてしまう。


現に自販機に向かうアンタの背が、チームを抜けるような空気を醸し出していた。


止めないと、そう思ったんだ。

ヨウさんがアンタに謝罪している時の顔、めちゃめちゃ悲しそうだったし。


でもアンタは言った。
舎弟じゃなくなっても俺とヨウの関係は変わらない。今の関係は崩れないって。


なんかハッとさせられた。
今もアンタは口先だけじゃなく、チームのために、オレ達のために自己犠牲しようとしている。


やっぱりオレは間違っているんだと思った。

オレは目に見える関係ばっかに拘っていたけど、アンタの言うとおり、目に見える関係が変わっても変わらなくても今の関係は崩れない。

オレはヨウさんを尊敬するし、背中を追っ駆け続ける。

それを自覚した時、オレはアンタのことを受け入れようと思ったんだ。こいつなら認められる、そう思ったんだ。


なのに、アンタはまるでオレ達を拒絶するかのようにひとりで無茶を背負い込んでばかりだ。助けてくれるのに、一切頼ろうとしてこない。なんで?


……ああそうか、ケイはオレ達を信用していないんだ。

あいつはオレ達の仲間だと思っていない。一線引いてオレ達と距離を取るのは、つまりそういうことだ。ケイはオレ達の仲間という自覚がない。

オレ、アンタが傷付くのは嫌だ。
そう思うのはアンタを、仲間だって思っているから。ヨウさんを信じて最後までついて行くつもりなら、チームメートのオレ達だって信じろよ。じゃないと虚しいだろ?」


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