青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―


「よろぴく。ケイちゃーん」

「アイダダダダ! い、痛いッ! ええっとっ」

「ワタルでよろぴく。うわぁ、ホント、染めてない髪。天然物だねぇー。染めないの?」


「イデー! 髪引っ張らないでくれ!」


容赦なく髪を引っ張られて俺は悲鳴を上げる。

三本ぐらいブチって抜けたような感触がした。

マジ痛いんですけど。

ホント、真面目に痛いんですけど。

俺が頭を抑えて悶絶する間も、貫名渉……いや、ワタルさんは俺の髪を見て「何色が似合うかなー」とニヤニヤ笑ってくる。


茶、赤、青、紫、金に銀。

物騒な色を俺の隣で唱えているワタルさんは、俺の髪にピンクなんて似合うんじゃないかと提案してくる。


仮に染めるとしても、ピンクは、ピンクは絶対に嫌だ。


大きく首を横に振って嫌だと態度で示せば、ワタルさんが物は試しってニヤついた顔で言ってくる。

からかっているのは見え見えだ。

悔しいんだけど反論する度胸がないんだよ、俺には。


心の中じゃ何だって言えるんだけどな! 自信持って言える俺が悲しいよ!


「ヨウちゃーんの舎弟かぁ。いつから?」

「き、昨日から」

「ビックリビビンバーン! 成り立てホヤホヤじゃーん、ケイちゃーん! だから、まだ髪染めてないわけかぁー。いつ染めるの?」

「いや、染める予定は」

「ないのー? それはヤバヤバーンじゃないのー?」

さっきから思うんだけど、ワタルさんって一々リアクションが大きい。

ちょっと大袈裟で口調がウザイ。

口が裂けても言えないけどさ(言ったらマジ、俺の命危ういよ)。


「ワタル。うぜぇってその口調」


「僕ちゃーんショッキング!」


俺の思っていたことをヨウが言った。

さすが天下の荒川庸一、どんな相手でもお前なら喧嘩売れるよ。

神様だってお前に喧嘩売られたら半べそだよ。

あからさま傷付いた振りをしているワタルさんは胸に手を当て、


「ヨウちゃーん、酷い」


嘘泣きしている。

男が嘘泣きってどうよ。男が嘘泣きって。引くって。

綺麗にワタルさんの態度をスルーするヨウは、大きな欠伸をまた一つ零した。


< 25 / 845 >

この作品をシェア

pagetop