青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



文具店を後にすると、近場のコンビニに足を踏み入れる。追試組のおやつを購入するためだ。


本当はスーパーの方が安上がりになるんだけど、新商品の豊富さはコンビニの方が勝る。


どうせなら活気付けるお菓子を買ってやろうとコンビニを選択した。


後から皆で折半するんだ。

ちょっと高めになっても大目に見てくれるだろう。


店内に入ると、「いらっしゃいませ」聞き覚えのある声音が聞こえてきた。


カウンターに視線を流すと、地味友の利二が揚げ物をつけている。


そうか、此処はあいつの働いているコンビニか。


狙って入ったわけじゃないけれど、足は自然と友達の働くコンビニを求めたみたいだ。

俺は軽く手をあげて利二に笑い掛ける。


向こうも目尻を下げてきた。

勤務中だろうから、これ以上の挨拶は控えておこう。


ココロも利二の存在に気付く。


「以前、ケイさんと喧嘩した方」


軽く驚いた様子だった。


そういえば俺と利二が大喧嘩した時、ココロもいたな。

今更羞恥心が込み上げてくる。

カッコ悪いところを見せちまったな。

喧嘩したことに後悔はしていないけれど、ココロに見られた事実には気恥ずかしさが出てくる。


誤魔化すように俺はカゴを取って飲み物売り場に向かった。


「あ、待って下さい」


ココロが急いで後を追い駆けてくる。

しくった、ココロを走らせた! 俺の馬鹿野郎。もっと気遣えよ……と、まあまあ、そんなことを思う俺乙である。ナニ変に意識をしているんだよ!


(ココロが手を握ったりしてくるから、余計に意識しちゃっているんだろうな)


勿論これは責任転嫁だ。


「五木さんでしたっけ、あの方。ケイさんのお友達ですよね?」


心中で溜息をついている此方の事情なんて露一つ知る由もないココロは、向こうのレジで接客している利二に視線を送っていた。

同校生の同級生、クラスメートなのだと俺は返事する。


「下の名前は利二。チームのために、間接的な情報役を買って出てくれているんだ。俺達の味方だよ」

「そうなんですか。じゃあ、お仲間になりますね」


後で挨拶しないと、ココロは律儀なことを言う。

ほんっと礼儀正しいよな。そういうところがこれまたかわ、いい……とか思ってない。思ってないんだからな! な!


「でもお仲間なら、私達にお顔くらい見せてくれても良いのに……ちゃんとお話したいです」


肩を落とすココロに俺は一笑零した。



「さっきも言ったように利二は直接的な仲間じゃないんだ。あくまで情報提供程度。あいつ、直接不良と関わりを持つつもりはないみたいだから。
えーっと、それにしても、みんな何がいいんだろ。勉強に集中できそうな飲み物……珈琲か。無難に。目が覚めるだろ」


「ワタルさんは炭酸が良いと思います。いつも炭酸しか飲まないので……コーラが好きなんですよね。シズさんは甘い物が好きだからカフェオレでしょうか」



棚からコーラとカフェオレの入ったペットボトルを一本ずつ手に取る。



「それから……」



ココロは皆の好きそうな飲み物を手早くカゴに入れ始める。

ココロって皆の好みをよく把握しているな。よく皆に気を回しているからだろうな。

カゴの中に商品を放り込む彼女を恍惚に見ていると、カゴの取っ手部分に手が掛けられた。


「へ?」間の抜けた声を出す俺に対し、「重たいでしょう?」自分が持つと彼女が申し出てくる。


ちょ……いやいや此処は俺が持たなきゃいけない雰囲気だろ。


もしもココロに持たせてみろよ。響子さんにばれでもしたら……。


『ほお? 可愛い妹分のココロに持たせた、だぁ? いい度胸だな、ケイ! アンタ、表に出ろ!』


身震いをしてしまう。

脳裏に響子さんの凄まじい形相が過ぎったんだけど。ヤーな汗が出たよ。悪寒も走ったよ。


響子さんって基本的に姉御肌で誰に対してでも優しいし世話も焼いてくれるんだけど、男女の扱いはまるで違う。


男は打たれて強くなるだろ精神を持っているから、男には結構手厳しい。


対して女にはとことん甘い。

ほんっとお姉さんって感じで弥生やココロの相談に乗ったりしている。

もし自分の女友達に手を出したり、泣かせたり、その他諸々好からぬことをしたら仲間であれなんであれ張り手が飛んでくるに違いない。

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