青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



横野に愛想笑いを浮かべて頬を掻いていたら、傍観者に回っている透と利二が視界の端に映る。

二人は何やら焦った様子で廊下を指差していた。

廊下の方を見たいのは山々だけど、俺、今、横野から視線逸らしたら瞬殺されそうなんだって。

「以後気を付けますか?」

見据えてくる横野に、どう返事を返そう。


出来れば「俺だけに言うな」と反論したいんだけど。横野に反論はキツイな。



「ケイ。おい、ケイ!」



うわっつ、そのお声は。

弾かれたように横野から目を逸らして廊下側に視線をやる。

窓を乗り越えて教室に堂々入って来るのは俺の舎兄。

ヨウの登場にクラスメートの目が俺に注がれる。


嗚呼、ヤな注目。


俺的にはもっとソフトな注目のされ方を望んでいるんだけど。


俺は片手を上げて、どうにか「よっ!」と元気よく挨拶。


「はよ。どうしたんだ? メールしているのにワザワザこっち来ることないんじゃないか?」

「ワリィ。現社の教科書持ってねぇか? 忘れちまった」


意外なお言葉に俺、内心びっくり仰天。

まさかヨウが現社の教科書を求めに来るなんて。

ヨウみたいなタイプ、教科書忘れても平然としてそうなんだけどな。もしくはロッカーに教科書を置いていたりしてると思っていたけど、もしかしてもしかすると根は真面目なのかも? 


たまたま現社があって教科書を持って来ていた俺は、引き出しから教科書を出してヨウに放り投げる。


片手でキャッチしたヨウは「ワリィ」って、爽やかに謝罪してきた。

イケメンの顔は今日も輝いているな。


クラスメートの女子が「かっこいい」と密かに囁かれているぜ。


女子の囁き声に気付いているのか気付いてないのか、ヨウは反応を示さなかった。


あれですよね、イケメンはそういうお声に慣れていらっしゃるですよね。


いえ嫌味ではありません。皮肉のつもりです。

決して嫌味ではありません。皮肉のつもりです。


でも少し羨ましい。

俺も「キャーッ! カッコイイ!」とか言われてみたい。


容姿の時点でアウトだけどさ。


ヨウはといえば、あろうことか学級委員の目の前だというのに平然と俺の机に座ってきた。

「行儀が悪いです!」

横野の注意をスルーして俺に話し掛けてくる。

お前、強いな。羨ましいくらいだぜ。喚いている横野もスゲェと思うけどさ。


「ケイ。今日分かっているよな?」

「分かっているって。ワタルさんから伝言聞いたし。けどさ、なんでワタルさん。あんな時間に電話なんて掛けてきたんだ? 俺、マージ眠い眠い」

「そういやワタルとの電話の途中で寝ちまったんだって?」

「だってよぉ。ワタルさん、四時半に電話を掛けてきたんだぜ? 新聞屋もまだ来てねぇって」

「の、ワリには、よく俺の伝言憶えていたな」


「ワタルさんが直々に『僕ちゃーん伝言一回しか言わない主義だからね♪』ってメールを下さっていたんで。おかげで思い出すのに苦労した」


早朝、目を覚まして俺、マジビビッた。


だってワタルさんからメールがあって、『だから二度と言わないからね』とか画面で出てあったんだぜ。


ワタルさんとの電話は夢だと思っていたのに。思い込んでいたのに。


< 44 / 845 >

この作品をシェア

pagetop