青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



溜息をつく俺にヨウは何か言いたげな顔をしていたけど、言葉が見つからなかったのか口を閉じてしまっていた。


それでも頭部を掻いてしきりに言葉を探そうとしてくれているのは分かる。


もしかしたら日賀野のことを聞きたいのかもしれない。


それはヨウにしか分からないけど、俺から日賀野の話題を切り出すことは出来なかった。


だって俺、日賀野に一度は魂売ろうとしたしさ。なんか決まりが悪い。



「ケイィイイイ! あんた何ヤラれてるんだよぉおおお! ヨウさんの顔に泥塗るなァアア!」



ギャンギャン吼えて俺達のところにやって来る不良一匹。

ヨウを崇拝して止まないモトさまのご登場だ。
是非是非今日はお前に会いたくなかったよ。お前の相手、スンゲー疲れるんだよな。

興奮したように声を荒げて「あいつになんかヤラれるなよ!」と、俺を指差してくる。



「オレは認めてねぇえけど、あんたヨウさんの舎弟だろ! なのにそんなボッロボロになっちまってよ! ダッサイんだよあんた!
しかもヤマトさんから舎弟に誘われただぁ?! あんたもしかして、既にヤマトさんの舎弟に成り下がっているんじゃねえのかぁああ?!」 



……モト、お前、ほんと容赦ないよな。

今ので田山圭太は二百のダメージを受けたぞ。殆ど残っていないHPが削られて瀕死状態だぜ、俺。

黙っている俺が気に食わないのか、「やっぱりそうなんだろぉおお!」と胸倉を掴んだ。 


ちょ、ちょちょちょ! またもや喧嘩か?! フルボッコか?! それはあんまりじゃねえかッ、てかモトの目が血走っている。コエーよ。


日賀野との一件で不良が恐くなくなったか? と問われたら、答えはノーだ!


寧ろ、日賀野との一件で不良が三倍恐くなったぜ! 殴られるとかマジないよ! マジ勘弁!


冷汗ダッラダラの俺を助けてくれたのはヨウだった。俺達の間に割って入ってくる。

「馬鹿、ヤメろ!」

「だってこいつッ、ヤマトさんに誘われたんでしょう?! ヤラれた振りをして本当は」

「モト! テメェ何言っているか」


「い、いいってヨウ。別に言われても仕方ないしさ!」


明るく言ったつもりなんだけど、空気がどんより重くなる。息苦しいくらい……息苦しいのはモトが胸倉掴んでいるせいだろうけど。

ヨウは舌打ちをしてモトに手を放すよう強要した。

モトは渋々と手を放してくれたけど、俺にガンを飛ばしてきた。信用されてないって事だよな。


仕方ないと思う。

ヨウ達と日賀野って仲が悪いらしいし、日賀野が舎弟になれって言ってきたし、一度は日賀野の勧誘に乗ろうとした。思い出しただけで悔しい。

モトの言うとおり、俺はヨウの顔に泥を塗った。勝てるとは思わなかったけどこんなにも一方的にヤラれちまったんだから。 



「やっぱ舎弟……失格だよな」



成り行き舎弟だけどさ、なんか悔しい。

俺は知らず知らず、絆創膏の入った箱を握り締めていた。

気付けば新品の箱が軽くひしゃげている。俺の気持ちがひしゃげた箱に表れている気がした。


俺の態度により空気は一層重くなった。


しまった、重くするつもりはなかったんだけど! 思っても後の祭りでヨウがモトに睨みを飛ばしていた。モトは必死にヨウの視線から逃げている。

でも俺にガンを飛ばすモトは立派だよ、ホント。



「ふざけるな、田山」



悪態を付かれた。この声は利二……?


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