主婦トピ Happy Birthday
<ゆきのんへ>世界で一番大切な日
街がキラキラしてる。
あと三日でクリスマスイヴ。
恋人達は華やいで、これからやってくるときめきに身を任せてる。

「お前程のイケメンがざまあないよな」

冷やかす悪ガキ仲間の台詞も今日は耳に入らない。
「うっせぃ」

今日は俺の悪態もあいつらはニヤニヤしながら受け流した。

「ま、頑張ってこいよ。成功を祈る」

照れ隠しに右手のばらの花束で顔を隠した。
まるで爪先も、髪の先にまで、心臓が宿ったよう。

俺はあいつらに背を向けて歩き出した。
真一文字にぎゅっと口をつぐんで。


脇を歩く恋人たちにはどんなふうに見えてるだろうか。
華やかな街の明かりの下、真っ赤なバラを抱えて怒ったように歩く俺は。

まるでひどい歯痛に堪えるように、奥歯に力を入れてかみ締めた。

口をあいたら、彼女に言うべき言葉が転がりでてしまいそうで。

凍てつくような空気の中に冴えた光が踊ってる。
イルミネーションに彩られてクリスマスツリーが瞬いていた。

自分の心臓の音が血管を伝ってこめかみに響いてくる。
クリスマスソングにも、自分の足音にもあっちゃいない。
リズムがあまりにもめちゃくちゃで、俺はただ心臓の音に身をゆだねることにした。
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