勝手に好きです!

真さんはぴくりと眉だけ上げてまたため息をつく。

「なんだ?その頭。見苦しい」

「ひゃいっ!すぐに直すです!」

ワシワシと手櫛で整えるのを見て真さんは深く息をはいて、指先で器用に私の髪を解いた。

ぐっは!子供をあやすような仕種でもハートはずきゅんだ!

「あ、ありがとうございまふ」

今日、頭は洗わない。決めた。確実に決めた。

「…風呂には入れ」

くっ、真さんの抑揚のない声が今日はまた一段と胸に響く。決めた。帰って風呂だ。今決めた。

真さんはスタスタと歩く。いつの間にか増えていた真さんのファンや近所のおばちゃん達もその美貌をため息混じりに眺めて真さんの歩く花道を作った。モーゼだ。モーゼがここに。


「真さんっ!必ずまた会いましょう!」

私はその背中に投げかける。


「遠慮する。それからその呼び方、いい加減やめろ」


ああ、やっぱり素敵だ。

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