チャンピオン【完】

15※プリーズミー





蛇足。


一郎兄貴が部屋にいない。

私は彼の姿を求め、暗闇のビルの中を彷徨っていた。



だって、いきなり明日不動産屋さん行くとか言いだすんだもん。

家具も一緒に選びに行く?

食器は? カーテンの色は?


話していたら目眩がするほど楽しくて、初めてかかったこの病気に私はすっかりやられていた。

パパはいないから、まずはあの兄貴だ。





ひと月前に貴丸によって破壊されたままのお手洗いの中から、出て来た人影があった。

お兄ちゃん、と言いかけてやめる。


その人物の動きがやたらと素早く、なんだか人目を忍んでいるように見えたからだ。

なんだか怪しい匂いがする。



まさか、こんなお金のなさそうなプロレス団体のビルに泥棒... !?

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