チャンピオン【完】

2※テンプティング





なんだかちょっと、嫌な予感はしていた。

会見が終わって記者さんたちが去った後、兄貴は真っ直ぐに私の元にやって来た。


「詩(ウタ)には何も聞かずに決めて、申し訳ないと思ってる。
不甲斐ない兄ですまん!!」

フライパンだったものを見つめたまま依然茫然としている私に向かい、兄貴はいきなり90度に腰を折った。


「... なにが?」

「... あら? まだおわかりにならない... ?」

なんで『何故角をとらない』みたいに言うの。


兄貴は満面の笑顔で、女王様を指さした。


「アレ、きっとすごく似合うよ♪ 詩」






その言葉が終わらぬうちに身体の向きをかえた私は、ジムの奥にあるトイレに駆け込んだ。

ドアの鍵を内側からかけ、そこをさらにモップの柄で塞ぐ。



だが、相手はガチムチなプロレスラーの兄ちゃんたち... こんなバリケードではまだ足りない気がした。

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