チャンピオン【完】
私はムカついて怒鳴ったが、リングサイドの兄貴に強く手招かれロープの外に出た。
やられた貴丸は何が可笑しいのか、肩を震わせて笑った。
その反応にマグマの赤い髪が更に憤怒に震えている。
追いかけるようにゴングが鳴った。
「今じゃん! 始まったの今でしょ!?
なんだよあの赤逆毛! がっぺムカつく!! がっぺムカつく!!」
誰も聞いてくれないから兄貴に文句を言ってみた。
柔道だったら奇襲なんて、やった瞬間負けです!
「あの刺青見てムカついたんでしょ☆ いいのいいの、怒らせとけば♪」
奇襲の勢いのままロープに放り投げられた貴丸は、戻って来てまともにエルボーをくらった。
それからヘビー級ガチムチ兄貴同士の、ド派手な投げ技の応酬が始まった。
一郎兄貴は目を輝かせ、「パイルドライバー! カッコイイ!!」等、いちいち興奮した様子で技の名前を叫んでいたが、私には貴丸がマグマの股間に顔を埋めている地獄絵図にしか見えなかった。
あれで精神的なショック狙ってるんでしょ。
今度は固め技らしい。