クロス

カーテン越しの外は、まだ朝じゃなかった。
暗い部屋の中で、時計の音だけが聞こえる。

起こしかかった身体は、汗でべっとりだ。
胸から全身へと、冷たさが広がっていく。
力が抜けた。
倒れこんだベッドが軋んだ。


不意打ちだった。
花凛の事を忘れていた訳ではない。
いや、忘れられた日なんてない。
それでも、不意打ちだった。

夢は残酷だ。
自分の思う様に、見れたりしない。
映画みたいにストーリーが流れていく。
運命より残酷なんじゃないか。
何一つ、変えられない。

悲しい結末を、知っているとしても。
どんなに幸せを望んでも。


あの頃の花凛と、あの頃の僕。
あれは、夢じゃない。
3年前の現実。

一つしかない終わりに向かう途中の。

泣けた。
次から次へと、涙が零れていく。

何で花凛なんだろう。
何で僕らなんだろう。


花凛がいなくなってからの、
何十回、何百回目の問い。
答えてはくれなかった。

誰も。
僕自身も。


< 20 / 20 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

恋線。
柊椿/著

総文字数/652

詩・短歌・俳句・川柳1ページ

表紙を見る
ぬくもり。
柊椿/著

総文字数/489

詩・短歌・俳句・川柳1ページ

表紙を見る
メール。
柊椿/著

総文字数/409

詩・短歌・俳句・川柳1ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop