君の御影に見た滴
それにしても不思議な女だと思った。


子供だとはいえ僕は男だ。


初めて見る男の前に何の物怖じもせずに飛び出してくるとは強気だ。
 

それともこの異国の血を引いてそうな背の高い美しい女には、十三になったばかりの、背も低く体つきもきゃしゃな僕のような者は男のうちに入らないのだろうか。


「あんた、危ないで。こんな時間にこんなとこをウロウロしてたら。無用心や」
 

女はそう言った。


でもそういう彼女の方がよっぽど無用心だと思う。


見たところ良い頃合いの歳だろう。


なのに一杯飲んだ軽薄な心持になっている男どもがよく通る道を一人で歩くなんて物騒だ。


犯されても誰も慰めてはくれない。



「そういうけど、姉さんの方がよっぽど無用心やで」
 


僕は初めて会う彼女のことを姉さんと呼んだ。


それは深い意味はなくて、ただ年上の人だと思ったからこそだった。


だけど彼女はとても不快そうな顔をした。


「私のことを知らんあんたまで、姉さんって言うんか」
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