いばら姫と王子様 ~AfterDays~
 
そんなことを思っていたら、芹霞と櫂が寄り添って、櫂の携帯電話を覗き込んでいた。


「櫂~ッ!! 約束が違うだろッ!!!」


「病院でうるせえんだよ、ボケッ!!」


今日珍しく、桜が居ること忘れていた。


肘鉄を脳天に食らい、くらくらしてくる。


「何、約束って」


「ん? お前が早く退院できるように、皆で願掛けをしたんだ」


櫂の声に、芹霞はふーんと何だか腑に落ちない顔つきをした。


というより。


櫂。


お前玲が纏わり付く病室で嫌に静かにしていたと思ったら、帰った後に携帯電話で芹霞と接触してたのかよ!?


「煌。芹霞と櫂が携帯で話すなんて珍しいことでもないよ? お前だって神崎家でいつも見てたんだろ?」


玲はいつものように微笑みながら言うけれど、こいつだってよくは思ってねえだろ。目が冷てえ。


「電話だけじゃなくメールまで。

メール嫌いな櫂がメールまで。

ねえ、芹霞。もし送られてくる櫂からのメールが、あのゲームのような意味不明な『ウザい』文章なら、それは偽櫂からのだからね。その時は僕に言うんだよ。即迷惑メール対処、してあげるから」


偽櫂って何だか判らねえけどよ、玲のこの意地悪い言い方と、櫂の苦虫を踏みつぶしたような顔からは、玲が邪魔しているということは判る。


判っていねえのは、芹霞だけだったみたいで。


「うん。その時はよろしくね」


ああ、櫂の面差しが凍り付いているじゃねえか。

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