いばら姫と王子様 ~AfterDays~
 
「有名ゲームメーカー"KAGAMI"の看板天才プログラマーが『KANAN』っていう、天使と悪魔のオンライン格闘ゲームの新作を発表したんだ」


私は遠坂由香を見つめる。


「それがさ、コントローラーなしで仮想現実(バーチャルリアリティ)の世界で戦えるという画期的なものなんだ。まあ、そんな凄い仕掛け施す機械をほいほい購入するわけにはいかないからさ、街の決められた場所にそれを設置して、そこで戦えるように…無論、全国に繋がるオンラインだ」


私は、ゲームの面白さというものは判らない。


紫堂の警護団に居れば、嫌でも現実世界で戦う羽目になるから。


「肉弾戦だけじゃなくてさ、何と魔法も使えるんだよ」


「魔法?」


「そう。予め選んだ天使と悪魔10体ずつの中の決められた魔法しか使えないんだけどね、それがその仮想現実の中では自在に使うことが出来るらしいんだ」


紫堂の力、みたいのものだろうか。


「まだ噂の段階だけどね。その新作発表の記念式典で、2週間限定で先行体験出来るという、プレミアチケットが20名に抽選配布されることになってね」


そして遠坂由香は両肩を竦めた。


「紫堂財閥のコネを総動員しても、そのチケットが取れないんだ。ねえ、葉山。君にもコネはないのかい? 天下の紫堂財閥に所属して、裏世界に詳しくて、君自身相当な格闘マニアなんだろ?」


表現は微妙だが、戦闘は好きだ。


「如月がそんなコネ持ってるわけないし、紫堂は…苦手なんだよな、ボク」


彼女は苦笑しながら、こめかみあたりを人差し指で掻いた。


「何て言うかさ、そんなくだらないことを聞いちゃいけないような気がして。取っつき難いんだ、簡単に言えば」


「取っつき難いって……私の方がそうじゃありません?」


「君はあえて喋ろうとしないだけだろ。話を振ればきちんと対応してくれる。だけど紫堂は違う。こちらが話そうと思う以前に弾かれる。ボクとしては、その紫堂に意見できる神崎が神に思えるけどね」


確かに。


櫂様の胸倉掴んで説教できるなんて、芹霞さんは無敵だ。


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