いばら姫と王子様 ~AfterDays~
 
彼がこんな柔らかな顔をするのは、久しぶりかもしれない。


それは多分に芹霞に関係することで。


ああもしかして――。


僕は知らずして自分の首を絞めてしまったんじゃなかろうか。


そんな危惧が生まれた。


櫂には対処方法がもう頭に浮かんでいるのだろう。


彼女を護り続けてきたのは、櫂なのだから。


櫂は、彼女を良く知りすぎている。


じり、と胸が焦げた。


櫂の存在はどこに居ても絶対的だ。


僕がどんなに頑張っても、2人が築き上げた時間を消し去ることは出来ない。


僕は、過去から長く続く櫂ほど、芹霞を構成する全てを判っていない。


それを悔しく思う。


この頃は特に。


"僕"が存在を主張する。


僕を凌駕する勢いで、芹霞を求めて喘いでいる。
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