灰かぶり姫 -spinoff-
昔の美由紀は俺の後にひっついて回るような大人しい子だった。


人見知りが激しくて、俺の前以外だとほとんど笑う事すらしないような。


だけど、いつの頃からか、美由紀は他の奴らの前でもニコニコと笑うようになった。


あんなに激しかった人見知りすらもしなくなって。


俺はそれが酷く腹立たしかった。


そして、いつの頃からか気付いたんだ。


美由紀は他の人間に泣き顔を見せていないという事に。


俺が冷たい言葉をかければ泣きそうな顔をする事に。


ただ、色んな表情が見たかった。


欲を言えば、自分にしか見せない顔が。


それが美由紀にとっては泣き顔だった。


自分にだけ見せられる表情。


自分だけだと思う事で特別だと感じている。


きっと俺は歪んでる。


そんな事でしか、美由紀にとっての特別になれないなんて。
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