好きな人争奪戦



 これでいいんだ。
 サヨナラ…俺の高校…。




もう姫の靴はボロボロだった。
それほど走った事が分かる。

俺は『そっ』と自分の靴を差し出した。


「えっ…?」
「俺の靴履けよ。裸足よりはマシだろ。」
「いや…北村くんはどうするの?」

「俺は別に汚れたって構わねぇ。けど、姫はいつも綺麗でいて欲しい。」
姫は一瞬驚いた顔をした。
けれどすぐに
「そんな着飾った姫、私はイヤ。」
と透いた瞳で言ってきた。

「え?」
「だって、明るく元気があったから、王子様は姫を好きになったと思う。姫は着飾ったらただの人形じゃない?」

「…そうだな。高木の言うとおりだ。」
と言って靴を履く。
「じゃあいこ。」
「あぁ。」
< 32 / 35 >

この作品をシェア

pagetop