【完】歌姫、そんな声で鳴かないで!
眼鏡を奪われて、もう片方の手は、私の頬を撫でる。



「俺はアスカを汚したいんだよ。この汚れた指で。堕としたいんだよ。俺のところへ。」



まるでその顔は、声は、月野森きららの時みたい。



「ヤスは…ヤスは、なんで、涙も流さず泣いているの?なんで歌いながら泣くの?」



だから、聞きたくなった。ずっとずっと思ってたことを、聞きたくなったんだよ。



私の言葉を聞くと、ヤスは濁った漆黒の瞳を見開いた。



しかしそれは一瞬で、直ぐに歪む。



勿論それは、喜びでも、悲しみでもなく、憤怒を表した顔。
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