【完】歌姫、そんな声で鳴かないで!
ふと、ヤスの手が止まった。



「………っ!なんだ、その涙。」



ヤスに言われて、私は自分の顔を触る。



確かに目尻から、温かいものが零れている。



「どんなに嫌がってもアスカは泣くような女じゃない。その涙は、PVの時と同じだ。なんだ、その涙は。」



「そんなの、分かん、ないよ。私の意思じゃない。」



そう、私の意思なんかじゃない。なのに涙は止まらない。



ヤスは冷たい濁った漆黒で私を覗っていたが、私にパサッとバスタオルを投げた。



「興醒め。濡れてるし、風邪引くから風呂でも入ったら?」



それがヤスの優しさなのかなんなのか分からないけど、私はタオルと散った制服を抱えて早足で部屋を出た。
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