君が教えてくれたこと
第二章「大切な子守唄」
「この坂、キツいね」

「久しぶりだと辛いよな」
僕は、由梨のペースに合わせた。

時間は、気にしなかった。
手を繋ぎながら、ゆっくりと歩いた。
ふと、告白した日のことを思い出した。

あの時、初めて手を繋いだ。
由梨は何も言わず、握り返してくれた。
「爪、切ってね」と、あの時も言われたな。と少し思い出して、一人で笑ってしまった。
「何、笑ってんの?」

「いや、ちょっと思い出してさ」

「気持ち悪い」

「気持ち悪いって言うな」
笑い合って、この坂を登れるのもあと少し、高校を卒業すれば、今みたいに毎日会う事も無くなる。

二人の時間を大切にしようと思った。
「先生!」
校門の前に立つ高山先生に、僕は気付き、声をかけた。
「北山!おはよう!あれ?お前?!渡辺くんという人がありながら?!!って、渡辺くんじゃないか?!」
高山先生は、目を丸くさせて言った。
「なんだよ。そのノリツッコミ?」
と、僕が言うと、由梨は、少し笑った。
そして・・

「先生、ただいま」
と声をかけ、頭を下げた。
「もう、大丈夫なのか?」

「はい。ご心配おかけしました」

「そうか、あんまり無理するなよ」

「はい」
学校のチャイムが鳴った。
「ほら、授業始まるぞ!!」

「由梨、行こう!」

「うん」

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