BAND(仮)
「…行ってきます」
…行ってらっしゃいは、もう6年前に途絶えた。
それからは ずーっと行ってらっしゃいの帰ってこない家を出る。
アパートの階段を降りれば、掃除をする大家さんと目があった。
「あら、しおちゃんおはよう!
帰ってきたら サラダのお裾分け持ってくわね!」
「…はい
ありがとうおばさん」
小さく会釈して
学校への道を歩く。
坂本 紫織
それが私の名前。
別に自慢じゃないけど
紫、この字は好きだった。
歩く度に徐々に生徒達が多くなってきた。
学校に近付いている証だ。