トリップ


「俺は、他人に好かれたって意味は無いと思うし、付き合いなんて俺達には邪魔なだけだ。」
「……そうなんや。」

さらっと冷たく言うので、エリカは「他の子が聞いたら悲しむやろうな」と考えてしまい、思わず苦笑してしまう。「ははは・・・」と声にした。

「へぇ〜……」
「何を苦笑いしている」
「先輩の一言でグサッと来る人、多そうやなぁ、と思って」
「何か傷付けるような事言ったか?」
「…言ったし」

両頬を膨らませながら言うと、リクは急に背中に体重をかけ、エリカの背中にもたれ掛かる。

「で、俺の言葉、何が気に入らなかったんだ?」
「えっ!?それは…」
「ん?何?」
「う〜…意地悪極まりなし。分かっとるんですか?」
「いや、正直全然分からない。でもあれだ。」

そう言いながら、リクは笑いはしないが愉快そうにして指を1本立てた。

「君に意地悪すると、面白いというか、楽しい。」
「ひっ…ドSやっ!!」
「悪いが、これは生まれてこの方なんだ。」
「〜悪魔やし!」
「どうも」
「ぐぎぎぎ〜……!」

歯を食いしばる姿を、リクは滑稽そうに見ていた。
もういいし、と呟いていると、どこからか吐息が聞こえる。エリカが横を見ると、リクが吐息を立てて横たわっている。

「寝てまった……。」

リクの寝顔をまじまじと覗こうとした時、彼は待ってましたと言うように瞼を開き、エリカお服の衿を引っつかみ、芝生の上に倒す。いや、引っ張って放したと言う方が近いのかもしれない。

「うわっ!?」

騙された。
エリカは心の中でそう思いながら芝生に倒れた。横にはリクの姿があり、なんとも驚かされるタヌキ寝入りだった。

「ビックリしたし!寿命が短くなってまったやんか!先輩、うちの寿命返して!」
「ここまで上手くいくなんて初めてだ、クッ…ハハハハハ!!」

堪え切れなくなったのか、リクは10年ぶりに、人前で満面の笑みを見せた。悪役の馬鹿笑いにも見えないことは無い。






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