トリップ

誘い


「キリちゃん。」
「おおう?」

シュンリとのおかしな会話から2日。
久しく時間が出来たエリカの部屋で一緒に遊んでいると、エリカはキャプテンにこんな話題を持ち出してきた。

「近々この近くで夏祭りがあるんやって。」
「マジですか!行く行く、一緒に行こう!」
「うん、勿論行く行く!」

これは毎年恒例の会話だった。はしゃぎ、喜び、その祭りの時間を楽しみにする。行く気は満々だったが、ここでエリカはある重要な事を思い出す。

「あーーっ!」
「ど、どうした!?」

キャプテンはエリカの声に驚いて、目を剥く。

「しまった・・・夏祭りの話題持ち出すんやなかった・・・!」
「い・・・一体何があった?」

エリカは絶望したような顔でキャプテンを見る。「はぁーー」と深い溜め息をついた。

「その日、学園の新聞のレポートを出さなあかんこと・・・すっかり忘れとった・・・」
「な・・・なんだってぇ・・・!?」

キャプテンも『がーん』という効果音が似合いそうな表情になる。

「そっかぁ・・・しまったなぁ」
「高校とか学園とか、レポートがあるで楽やないよね」
「丁度、祭りの時間に提出?」
「うん、編集とかにも付き会わないかんの」
「うー・・・そうかぁ・・・。残念極まりない」

キャプテンは深刻な顔になって腕を組む。「なんとか早く帰って来れればな」

「編集も入れとると、なかなか行けそうに無い時間になりそう・・・」
「そっか・・・。じゃあ、うちも行かんとこっかなぁ」
「え?いいよそんな」
「大丈夫、気は遣ってないで」
「いや、それじゃつまらんやろ。誰か、他の子と行ってこやー。こっちはいいで」
「・・・本当に大丈夫?」
「うん」

キャプテンは、寂しそうな表情を浮かべてから無理に「うん、ありがと」と笑って見せた。








< 186 / 418 >

この作品をシェア

pagetop