トリップ

実際に知っているからか、それとも彼の勘なのか。
それ以前に、どのレベルの危険なのかも知りたい。
不良などの・・・いや、キャプテンにとってはそれも十分に危険なのだが、そういった一般的な危険なのか、殺し屋といった命に関わるような危険なのか、詳しく聞くわけにも行かないため、結局その話題を流してしまった。

「ファンタジーって、どんな物書くんですか?」
「そうやなー・・・。異世界とか!」
「異世界、どういう世界にするんですか?」
「ん~、やっぱりドラゴンとかやと一般的過ぎるで・・・他にはないような話かな?」

そうですか~、とジュマは陽気に笑うと、パソコンに目を向けた。こんな風に話している今でも、「路地裏に入るな」と言ってきた時のジュマの真剣さの混じった声が頭に残っている。

・・・・・・・・

放課後には教師の手伝いを買って出た。いや、重そうに荷物を運んでいる彼女とすれ違い、「これは手伝わないとまずいな」と思ったからである。

もう1つの理由、教師は若く綺麗な女性で、その上優しそうな顔立ち。キャプテンが「手伝おう」という気を起こした1番の理由だ。

「そういえば、キリダさん今日の作文でA取ったって?」
「ああ、はい。」
「凄いじゃない!あの採点が厳しい国語の先生でもA付けるなんて。」
「あ・・・どうも・・・」

教師の優しさが、こちらの体にまで滲んでくるようで(あくまでそれは、キャプテンの中の表現だ)、目尻が熱くなった。
それはそこまで本気なものでもなく、そのキャプテンの顔を漫画やアニメで例えるなら、涙を洪水のように流して大喜びする単純なキャラクターのような顔だ。

というのも、単に以前は優しい教師に恵まれたことが数度しかなかったため、感動したと言う事である。

キャプテンにとっては、この教師が若くて美人、というのも1つの「いい教師に恵まれた」と捉えることの1つに入っているのだろう。







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