トリップ

奇襲




「おい」

エリカが文化祭の準備中で帰れないと言うので、ジュマと帰ることにした。そんな中、キャプテンは後ろから声をかけられたので振り向く。

目の前に立っていたのは、朝に見た痩身の写真を持った男だった。狐のような顔をしており、鼻が細く目がつり上がっている。

「お前じゃねぇよ。そこの男のガキに用があるんだっての」

ケイラに似た口調の男は、キャプテンにシッシッと手を振り、払い除けるようにする。
キャプテンはムッとしつつも、逆らいづらい相手だったため(そして初対面だ)何も言わず道をあける。

「お前、ちょっとこっち来いよ」

男はどうやらジュマに用があるらしい。キャプテンは気弱なジュマが心配になったが、彼はしばらく男をじろじろと見ると、いつもと違った真剣な、険しい顔つきになり、怯えることなくコクリとうなづいた。

知り合いか、とキャプテンは半ばホッとするが、男の不穏な空気は消えない。
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