トリップ

バカにしている、というよりは、感心したように思えた。

「俺が以前連れた集団を連れてこなかったのは、この件を1人で片付けるためだ。俺はもう、この血生臭い仕事に決着つけたいしな。勝てば仕事に、負ければ人生にピリオドを打つことになる。ま、俺はどっちが終わっても悔いはねぇがな」

笑みを浮かべながら小久保は外を見る。耳を傾けると、足音がどんどん近づいてくる。縄を解かれたキャプテンは少し焦った。

「お出まし、か」
「おっさん、本気で・・・」
「当たり前だっつうの、お前、寺には絶対入って来んなよ」

分かった・・・としぶしぶ言うと、小久保は寺のドアを開ける。外にケイラの姿が映った。
手にナイフは持っていない、顔つきも至って普通だったが、瞳は違った。空色の瞳に怒りが映されているように見える。感情が表に出ていた。

「あいつは・・・どこ行ったんだよ」

低く、唸るような声でケイラは言う。小久保は「あれ?」と周りを見て、隠れているキャプテンを引っ張り出す。

「ほら、行け」
「・・・どうしても、停戦とかあかん?」
「だめだ。早く行け」

介抱した犬を逃がすかのような手つきでキャプテンを追い払う。ケイラは「何で手とか縛られてねぇんだ」とほんの少しだけ不思議そうな顔をする。




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