トリップ

ポツリと呟いたその0.5秒もしないうちにキャプテンを呼ぶ声がする。

「姉貴ー」

ヒロムだ。重い体を持ち上げると「なんや」と台所に向かう。

「寝すぎやって。もう9時」
「え?」
「日差しが良かったやろ?日も高く上っとるよ」
「まじかい・・・」

大きくあくびをすると、机の上に置いてあったアダルト系の本を見つける。昨晩、シンゴが読んだのだろう。唇が緩んでくる。
小さく、小刻みに長く笑ってから「雨、降り出したわ」と雷が鳴る音を聞いた。「あ、なんやろ。通り雨?」とヒロムが言う中、キャプテンは真顔で呟く。

「キャプテンの、出来上がり」

浮き沈みしている感情が、何となく安定する。


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