夜中散歩
rain
「ただいまー」
家に入り靴を脱ぐ。と言っても誰も家には居ない。
溜め息を一つつくと携帯を開いた。
自転車に乗っていたから気づかなかったんだろうか。
満月から電話がかかってきていた。
とりあえず来ているメールを開く。

『助けて』

三文字しか書いていないそのメールを開いた瞬間、俺は走り出した。

満月は同い年の13歳だった。
初めて友達の家で会ったとき、妙に無愛想で笑わないのが印象的で。
だけど2人で遊んでたときにはそのイメージとは異なった。
普通に笑うし、普通に悩みも抱えて。
大人っぽいという印象とは違って、普通の女の子。
取り巻く環境は決して普通ではないんだけれど。
それは自分と少し似ている部分があるかもしれなかった。

自転車に乗り、うろ覚えの道を辿りながら満月の家へと向かう。
家の前に着き電話をかけるけれど、留守電になってしまう。
「鍵開いてるんのかな・・・」
深呼吸し、家のドアに手をかける。
なぜか鍵は閉まっていなく、簡単に開いた。

家に入るけれど誰かが居る気配はまったくしない。
電気もついていないし、本当に満月が居るのかも分からない。
もう一度携帯を開き電話をかける。
すると、2階の部屋から着信音が聞こえた。
恐る恐る階段を上がる。
階段を数段上がったところで、悲鳴にも近い声が聞こえる。
奥から二番目の部屋。

「満月・・・?」
ドアを開くと目を真っ赤にして抵抗する満月と、その上に馬乗りになって口を塞ぐ、満月の兄の姿があった。


< 27 / 126 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop