夜中散歩
そしてお昼を回った頃、仕事を早引きしたであろう父が帰ってきた。
周りを見渡しては、母に何か言葉を求める。
「優哉が、優哉がね・・・」
涙ぐむ母の代わりに、早川が話をした。

父と母がソファーに腰をかけ、並んで話を聞く。
それを満月はぼんやりと眺めていた。
問題は父にあるから。
あの写真をどう使うか。
それだけをずっと考えていた。

「お母さん、昨日の夜って何時に帰ってきた?」
父が家に来る少し前、私は母に聞いた。
昨日の夜に、あの足跡を残したのは誰か。
ほぼ見当は立っていたけれど、一応念のために確認しておく。
「22時過ぎ、くらい」
その言葉で確信に変わる。

もし父が昨夜のことを知っているなら。
その時のは父を手にかけなければならない。
そんなことはしたくないけれど。
不思議と、分かってしまったときの対処法を考えていた。
兄の日記から見つかったあの写真。
あれを残してくれた以上、私は有利に使わなければいけない。
弱味は握られているんだから、今の状態では私が有利。
いや、もしかすれば不利かもしれない。

手に持っていた携帯を開いた。
検索画面を開いて、ある言葉を検索にかける。
『少年犯罪』、そして『完全犯罪』。
何こんな言葉検索してるんだろう。
そう思って画面を閉じようとした、けれど。
今の自分にはそう遠い言葉ではない。

溜め息をして、ふいに視線を向ける。
すると、父と目が合った。
何かを疑うような、そんな目。
なんでそんな目するの、お父さん。
また、心のどこかが押しつぶされるような感覚。
そんな目しないでよ。
知ってるなんて言わないでよ。
私は、あなたまで殺す訳にはいかない。
また携帯に視線を移す。









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