女心とアキのソラ

５ ナツ

『５　ナツ』

兎にも角にも。
私たちはアキを別人の可愛い女の子に仕立て上げる事に成功した。

瞼をめくって粘膜ギリギリにアイラインをひき、つけまつげを二つ重ね、マスカラとビューラーを駆使し、ブラウンとゴールドのアイシャドウで上品な目元に仕立てる。
肌はコンシーラでニキビ跡を隠し、ファンデを３色使い分けてマイナス５歳肌に。
そして最後にナチュラルなベージュの口紅にピンクのグロスを重ねた。
髪は明るい茶色のウイッグをかぶせ、目ギリギリで重い前髪を切り揃え、ゆるふわの肩まである横髪を残し、後ろの髪だけでてっぺんにおだんごを作る。

普段すっぴん黒髪ボブのアキは、私が顔や髪をいじるたびに

「きゃー！いや、ダメ！そんなことしないで！」
「ヤダ、ちょっ…やん」
「あん、だめ…そこそんなふうにしちゃイヤ」
「やー、ぬるぬるするー」
「うはぁぁぁ、目がぁぁぁ！」

等の聞き方によってはエロい事をされているようにもとれなくはない言葉の数々を吐いていたが、ようやく完成した自分の顔は気に入ったようで

「えー！マジ？これ私？読モやん！読モ！」

と鏡を見ながらはしゃいでいた。

ハルも感心したようにアキをまじまじと見つめ、

「さすがナツ。腐っても鯛。ゲロっても美容師」

という適当な賛辞をくれた。

服は新品が良かろうという事になり、近くの某ファッションセンターで購入、そのまま着替えて。

私たちは今、電車に揺られている。