おとぎ噺
ポツポツと会話しているうちに降りる駅に着いた。


やっと混み合った車内から解放されたとき、お互いに目が合って微笑みあった。


なんか一緒に満員電車で戦った同志、みたいな。


「これ、僕の名刺です。こんなことすると軽いと思われるかもしれませんけど、また会えたらいいですね。」


“榊原伊織”


名前もかっこいいのね。


右手をあげ「では」と去っていく後ろ姿から目が離せずしばらく放心状態だった。


あ、会社行かなきゃ。
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