【中編】夢幻華

「杏ちゃんが泣くと暁が悲しむよ。
あいつの頭ん中はいつだって杏ちゃんのことでいっぱいなんだから」

「そんなことない…そうだったらどんなに嬉しいか…。
暁には彼女がいるのは知っているでしょう？
二人がどんな関係かくらいあたしだって知ってるわ」

自分の言葉に傷つきながら、それでも吐き出さずにいられなかった。


暁はあたしの手の届かないところにいる。


それが分かっているから…

辛くて…

悲しくて…

いつまでも止まらない涙を、響さんはずっと拭ってくれた。

優しく抱きとめて、あやすように背中をさすってくれる。

暁の友達だからだろうか…

暁の腕の中を思い出して、心が凪いで行くのが分かった。

あたしは響さんに腕を回すと

そのまま想いをぶつけるようにしゃくりあげた。