【中編】夢幻華
恋人契約…

お互いに好きな相手を想ったまま恋人同士の関係になる。

最愛の人だけを愛して生きながら、独りでは埋めきれない寂しさを、互いの想い人の代わりとなって支えていくパートナー。

付き合ってくれと言われることは頻繁だったし、その事には驚きもしなかったが、このちょっと変わった提案には面食らった。

だが誰と付き合っても1ヶ月程度しか続かなかった俺は、どうせ今回もまた同じようなものだろうと簡単にOKした。

杏に良く似た彼女なら、契約だろうが何だろうが胸に開いた穴が少しは埋まるかもしれないと思ったからだ。

百合子もそれに近い気持ちだったのかもしれない。

彼女は決して結ばれることのない相手との恋に苦しんでいた。

相手がどんなヤツなのかは、最後まで教えてもらえなかったが、俺はソイツと顔立ちや雰囲気が似ているそうだ。

百合子が杏と似ていると思っていた俺は、その奇妙な一致に妙な縁を感じていた。

その縁のせいだろうか? 
1年以上付き合ったヤツにしか携帯番号を教えないと決めていたこの俺が、初めて杏以外の女に携帯番号を教える事となった。

珍しく長く続いている交際に、よほど相性が良いのだと周囲からは見られていたようだが、本当は違う。

1年経とうが2年経とうが、俺たちの間にあるのはあくまでも契約であることに変わりはないのだ。

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