傷だらけのヴィーナス
―――そばにいたい。
そんなことを言われたのは、初めてだったんだ。
恋愛なんてできないと、ずっと思っていた私がたった一言で揺さぶられている。
「わ、私……」
言ってもいいのだろうか。
望んでいいのだろうか。
あぁ、かすかな灯りしかない夜でよかった。
…こんな顔見られたくない。
涙を必死で我慢している顔なんて。
「私で、良いなら…」
そう口にするのがやっとだった。
そっと見上げると、こちらを妖艶な表情で見つめる間部主任と目が合った。
これがはじまり。
―――私たちの、始まりなんだ。