傷だらけのヴィーナス
「だから何だ?」
小林君の言葉に怯むことなく、間部主任はこちらに寄ってきた。
一歩、一歩。
確実に近づく足音が私の心を乱していく。
間部主任は俯く私の目の前に跪き、話し出した。
「夕べはごめん。一人で無事に帰れた?」
そう話しかけられ、私は返事ができなかった。
口を開いたら泣いてしまいそうで。
…会社だということも忘れて。
「―――失礼します」
小林君はそういって頭を下げると、足早にこの場を去っていった。