きいろい青空【完】




「えっとぉ…」


 
言葉を探していると、花恋は目線を外し俺の横を通り過ぎた。



俺に背を向け歩き出した。



「……待っ…て」



俺は花恋の腕をつかんだ。



「花恋」


「………」



何も言わないまま、花恋は背中だけを向けている。


振り返るということはしてくれない。




だんだん肌寒くなってきている10月だというのに、とても短いミニスカート。


高いヒール。



こんなにオシャレして、デートでも行くのかな…?




「…ごめん。今さら思い出したんだ。俺達が、4才の時に桜の木の下で交わした約束。大っきいお城でチューしようっていうの…」



そこで言葉を切った。


そして、問う。




「花恋は……この約束を。憶えて…る?」



声が少し震えてのがわかった。


期待している自分がいる。



『憶えている』と言ってくれるのを待っている…。



しかし、花恋の言葉は…




「は?なにそれ」



冷淡に言う花恋。


たったこれだけの短い言葉が突き刺さる。


深い絶望に突き落とされた。




「え……?今、なんて…」



「そんな昔のこと。憶えているわけないじゃん」




この人は……


本当に花恋なの…?




「これからデートなんだけど。手、離して」



「……っ」



下唇を噛んだ。



「や…だ…。」



俺は、小さく小さくつぶやいた。




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