空に手が届きそうだ
今日は人が多いなと思った。

いつにもまして、信号待ちの車も学生もヘルメットも多い気がした。

横を通り過ぎる改造自転車は、中学生かなと思った。

「ちょっと時間違うだけで、人の数全然違うね。」

うんと、優の声に二人は頷く。

なだらかな住宅街の道に入ると、人の数は少ないが同じ制服を着ている学生をちらほら見かける。

「良子、今日は居ると思う?。」
「誰が?」
「オレンジ君。」
「居るんじゃない?風花がそんな事聞くんて珍しいなぁ。」
「ほんまに。なんかあった?」
「ううん。なんもない。ちょっと気になっただけ」
凜として、少し早く歩く後ろ姿は優等生そのものだった。

「早く行こう!!!」
「ちょっと待って。」
風花の後ろ姿を見ながら、二人でゆっくりと歩く。
「大丈夫?」
「大丈夫。」
そう言った顔は、少しだけ寂しそうに見えた。
「無理したらあかんよ」
「うん。」
力強く返事をする。

(きっと、大丈夫。だって、私にはみんなが居る。だから、大丈夫。)

早く早くと、少し前に立って待っている風花が急かす。
「ごめん…。」
やっと追いつくと、また三人で並んで歩いた。

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