空に手が届きそうだ
(今日も、居た。)
黒髪の中にある、よく目立つオレンジの髪。
並んだ教室を横目に、人の間を縫うようにして歩く。

なるべく早く、なるべく堂々とした。

少し、軽くなる足。
人に当たらないように気をつけて、教室の間を抜けるように曲がって、職員室へ続く冷たい廊下を歩く。

ひんやりとした廊下は、人気がなく寂しい。

そっと、扉に耳を近づけると先生達の元気な声がする。

まだ、チャイムは鳴ってない。
会議……と思いつつ、不安になり開けるのを辞めた。

(終わってからにした方がいいかな?)

そう思って、冷たい廊下の壁に持たれる。

使い古した、パール。買ったばかりの頃とは違い、黒ずんでいる。少し、大きかった制服も丁度のサイズになった。スカートも、入った頃とは短い。

もうすぐ着れなくなると思うと、寂しくなる。

ガラっと、職員室の扉が開いた。
「おっ、大川来てたか。」
急に、名前を呼ばれて一瞬ドキっとする。
「あっ、はい……。」
「ちょっと待ってな。」
そう言ってまた、日下部は職員室に入る。

開けっ放しの扉の近くまで行くが、気持ち悪くなって入るのを辞めた。

「ごめんな。気づかなくて。」

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