空に手が届きそうだ
「あんま、無理すんなよ……。」
優しい声が、体に響く。
―大丈夫だから心配しないで。
そんな気持ちを込めて頷いた。
その表情に柔らかく笑うと、優の頭をくしゃくしゃと撫でた。
それを合図にするかのように自然と、足が止まる。
すっと、差し出された手を握るように、流は半歩先で止まった。
あと一歩で、五月蝿い世界。
「ごめんね。忙しいのに話し長くなっちゃって」
「別にいい。俺が連れ出したんだから」
顔が見れなかったが、優しい言葉が返ってきた。
少し、軽くなった心。
「じゃあな、優。あとでな。」
「うん。」
振り返って軽く笑うと、流は背を向けた。
優は、少しずつ小さくなる背中にありがとうと言って五月蝿い世界へと踏み出す。
(大丈夫かな……。)
少し不安になって、振り返ると何処か安心したような優が柔らかく歩いていた。
その姿を見て、流は安心したように純一郎の元へ向かう。
只でさえ目立つ髪型が、職員室から半分出ていた。
「流ちゃんは~???」
「だから、日下部先生はここには居ません。何か言えば分かるの?」
仕事の邪魔だと言わんばかりに、資料を両手に抱えた原口が純一郎を外へ出す。