空に手が届きそうだ
孤独時間
一階まで降りて職員室へ続く冷たい廊下を突っ切る。
その間は、五月蝿い声ばかりが体を刺す。

純一郎、という声と共に温かい笑顔が手を振る。

「怜!!!」
職員室前まで行くと、大量の荷物を足元に置いてニコニコと手を振っている怜が居た。

「ごめんね優。」
「ううん。全然いいよ純一郎もありがとう。」
「別に。」
「優、明日来る?」
「まだ、わかんない。」
あのね、と始まった会話にすっかり、純一郎は蚊帳の外。

(さっは、俺呼んだじゃん……。)

今日は何時に来ただとか、昨日はどんなテレビを見ただとか、明日の文化祭の事などを一通り決まり文句のように話した。

「でね、優。これ縫って欲しいの。」
足元から、布の入っている大きめの紙袋を手渡す。
「これは?」
「出し物に使う、小物なんだけど……。」

カラフルな模様の細長い布と、ネクタイの形に切られたシックな布が入っていた。

「ネクタイと?」
「シュシュ。これを、縫って欲しいの。形には切ってあるからあとは縫うだけだし。」
「全部?」
「うん。」
そんなには、多くない量。
「わかった。」
「ありがとう。部屋は、日下部先生に言って、特別に開けて貰ったし先生に聞いて。」
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