空に手が届きそうだ
「知らなかったの?流さん、先生だよ」
「知らなかった……。」
「先生、今日は坂本さんの所へ行くって楽しそうにおっしゃってましたよ。」
「そうなんすよ。今日は、僕の家で集まるんです。」
「大川さんも?」
「あっ、はい。」
「仲良いのね」
かぁっと顔が赤くなる。
「僕の、彼女ですから」
「あら、ご馳走さまだ事。」
恥ずかしすぎて、優は俯いてしまった。
「葵、そろそろ帰ろう。」
「あっ、はい。」
幸せそうに頷く葵を見て、本当に夫婦なんだと思った。
「じゃあね、大川さん。」
「はい。また、学校で先生。」
くるみに手を振ると、小さく笑ってくれた。
「仲良さそうな夫婦だな。」
「うん。いいなぁ。」
レジに向かいながら話す。
「きっと、幸せなんだろうな。」
「思った、それ。」
ぴっぴっ、とレジを通る商品。
「2590円です。」
後ろのポケットから財布を出して支払いをしてレシートを受け取る。
「そんな所入れとくと、盗られるよ。」
「大丈夫だよ。」
カゴを持って、少し離れた所にあるいつもの場所へ移動する。
「袋、一枚で入るか?」
「入るよ。」
優は、慣れた手つきで買った物を袋に入れていった。
「じゃあ、帰るか。」
「うん。」
< 54 / 96 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop