鏡の中の僕に、花束を・・・
17
どうやら、いい返事がもらえたようだ。家に着くまでは、まるで現実感がなかった。しかし、今こうして届いている彼女からのメールも見ると、どう考えてもうまくいったらしい。

「武志、なんだいにやけて。」
夕食の時だ。母親が言った。
「えっ、にやけてなんかないよ。」
「そんな事ないよ。今、本当にだらしない顔でにやけてた。」
母親の視線が痛い。どうやら、いつの間にかメールを思い出していたらしい。
「違うって!」
「なんだい、隠さなくてもいいだろう?あんたもいい歳なんだからさ、好きな子が出来てもおかしくないさ。」
今度は母親がにやけた。
「で、どんな子なんだい?」
「ち、違うって。」
僕は早々に食卓を後にした。よく恋をすると、食事も喉を通らないとか聞くがこう言う事を言っているのだろうか。違う気がする。
ただ、空腹と言う感覚が、彼女とのやりとりを現実だと告げてくれる役割を果たしていた。
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