鏡の中の僕に、花束を・・・
とりあえず、電子レンジから夕飯を出した。食べる訳でわない。左手を暖めるためだ。
「ふぅ。」
夕飯は適度に冷めていた。それが心地良かった。熱々だったら、この冷えた手にはキツ過ぎる。
「しかし、さっきのはなんだったんだ?」
奴の顔は自分の顔だ。見慣れているはずなのに、思い出すと恐ろしさが蘇る。実に妙な感覚だ。
夕飯は炒飯だった。手が暖まっていくうちに、だんだんと恐怖は薄れ、自分が空腹だったのだと思い出した。
「食うか・・・。」
スプーンを手に取った。レンゲでないのが、安っぽさを感じさせた。
一口。マズい。見事に冷めている。
「なんだかなぁ。」
かと言って、コンビニに行くのも面倒だ。それにバイトをクビになったから、金がない。しかたなく、食べ続けた。
三口目だ。恐怖は意外な所からやって来た。
「痛っ。」
口元をまさぐると、血がついていた。
「なんで?」
理由はすぐにわかった。スプーンだ。スプーンに映っている歪んだ自分の姿。奴だ。歪んだ姿のまま襲って来たのだ。
「こんな所から?」
「う、うう・・・。」
奴は唸っていた。僕は慌ててスプーンを投げ捨てた。
流しに置いてあった洗い物に当たり、何かが割れた。
「どうなった?」
気になる。割れた音の後は、何も聞こえない。奴がいるなら、何か音がするのではないだろうか。
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