夢中遊泳、その先に君

ヒロイチとわたしは、校内でも仲が良いと評判のカップルらしかった。

お昼は一緒に食べていたし、毎日一緒に帰った。ヒロイチの自転車の後ろにのっけてもらって。

でもヒロイチのチャリはお古で所々錆びたものだったから、ヒロイチがペダルを踏み込む度にキィキィと、痛そうな声で鳴いた。


雨の日はバスで通学した。藍色の傘と、黄緑の傘を並べて。

わたしの傘は決して小さいサイズなんかじゃなく普通なんだけど、ヒロイチの傘が馬鹿デカイせいでやけに小さく見えてしまうのだった。


初めてキスをしたのは、3回目のデートの時。

デートと言っても、学校帰りに買い食いをして、公園に寄っただけなのだけれど。

ヒロイチはとても緊張していて。

唇と唇のわずかな距離を詰めるその間に息が止まってしまいそうだったから、わたしは背伸びしてその距離を縮めた。


…それから何度も、数え切れないくらいキスをした。

本当は数えているけれど。

言ってしまうのは恥ずかしいし、なんだかもったいないから。

ただのカウントとして、回数として表してしまうのは。

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