白銀の女神 紅の王
5章 過去との対峙

大切な人




道を外れた森の中―――

シルバと合流してから、小さな泉のほとりへ来ていた。



馬をつなぎ、木陰に下ろされる。


「服を割くぞ?」

シルバの言葉に、コクリと頷く。



ビリッビリッ――――

器用に血の付いた服を割いていくシルバ。

それを、ただ茫然と見つめる。



これは……夢……?

シルバが、本当に追って来てくれたなんて…

シルバと再会した時、息が止まりそうだった。



だって……

来るわけないって。

私なんかの為に、一国の王であるシルバが動くはずないって。

私が自分の力で帰らなければ、また貴方に会う事は出来ないって思っていたから……



そう思ったら、溢れる涙を止められる事は出来なくて。

抱きしめてくれる腕の中が、あまりにも温かくて。

背中に回された手に、涙を抑える事が出来なかった……


けれど……

これは、私自身が見せた都合の良い夢なのではないかと、不安になる。



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