白銀の女神 紅の王

蘇る過去




『シルバッ!』


ぶつかり合う剣の音と、人々の声が入り混じる喧騒の中―――

それは、真っ直ぐ俺に届いた……







俺とエレナだけの静かな泉に、不穏がもたらされたのは、まだ日も昇ったばかりの朝だった―――

エレナの傷の手当てをしていた時。

逃げるためとはいえ、自分の腕を切りつけたエレナに苛立ちを覚え。

涙を流す姿に、その苛立ちはスッと消え去り。

代わりに胸を支配したのは、どうしようもない程のもどかしさ。



“泣いて欲しくない”


ただ、そう思って抱きしめた。


らしくない考えに、らしくない行動。

その時は、全てがおかしかった。



だからだ……

不覚にも、忍び寄る音に気付かないまま、奴らの接近を許してしまったのは……

内心の苛立ちが悪態となって出て来て、その音がした森の中に向かって叫べば…

森の中から出てきたのは、黒ずくめの男たち。


次いで出てきたのは、今や、国家の逆賊になり下がった者だった。

表の顔は、伯爵家の貴族。

そして、裏の顔は国家の反逆者、闇の組織ブレイムの創始者……



フォレストだった。




< 385 / 531 >

この作品をシェア

pagetop