天使と悪魔~2つの顔を持つ男~

――先生にどんな顔して会えばいいかわからないよ……。




千里は緒方のメールを眺めながら、ぼんやり1人下校していた。




きっと呼び出しを無視した事に腹を立てて、

もういらないとか言われてしまうかもしれない。




そして新しい人間を早々と捜すのだろうか。




君は特別だと言って、

キスしてセックスして自宅に上げて料理を振る舞って……。





「何か、嫌だよ……」







その光景を想像するだけで胸が痛い。


ズキンズキンと傷ついた箇所から音が聞こえてくるみたいに。



緒方にとって自分が最後の人間でいてほしいと願うのは、

自分以外に同じような事をしてほしくないからだ。





そこに感情が無いときわかっていても、好きな人の側にいたい。


1番近くで緒方の素顔を見ていたいのだ。




胸がギュッと締め付けるように苦しくなってきて、

千里は思わず涙ぐんだ。






誰かを好きになることはこんなにも辛い事なんて……。









その瞬間、道路に見覚えのある1台の車が路肩に止まっていた。





そして運転席から1人の人間が降りてきたと思ったら、

カツカツと靴音を鳴らしながら千里に近寄ってくる。
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