蔓薔薇

胸に刺さる

私は、イサオさんから目線を
逸らし顔を俯けたまま
彼の脇を通り過ぎようとした
 
そんな私の手を、彼は、強く
痛い程に握りしめ泣いている
私の顔を覗き込む。

「アキラと

 何かあったの?」

そこへ、非常階段から息を
切らして降りて来た
アキラさんが現れた。
 
アキラさんの開けた上着を見た
イサオさんは彼に詰め寄り
冷めた低い声で問いかける。

「アキラ、おまえ
 ミオちゃんに何した?」

「イサオさん、違うんです
  
 アキラさんは悪くない
 私が、勝手に泣いてるだけで
 ・・・」
 
「キスしたよ、何度も
  
 悪い?」

イサオさんは、アキラさんの
挑発した言い種に腹を立て
彼の左頬を強く打つ。
 
打たれたアキラさんは
その威力のあるパンチに
一歩、後退りした。
 
そんな彼の、胸倉をイサオさん
は掴む。
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